新素材応用RT


<研究目的>

図 1 電子デバイス化ナノシートイメージ

本学生命医科学科武岡研究室で開発された高分子超薄膜(以下,ナノシート)は,厚さ約数十~数百[nm]の超薄膜である.Roll to Rollというプロセスにより,非常に廉価に大面積かつ大量に製膜する事が可能であり,自身の薄さに由来する密着力により,皮膚等の生体表面に接着剤などを用いずに貼付可能である.また,貼付後は生体表面と一体化し,装着感は限りなく少ない.さらに,ナノシートは本来創傷被覆材などといった医療応用を目的として開発されたため,生体表面のみならず,内臓等にも貼付可能なほど生体適合性が高い. 他方,近年ウェアラブルデバイスの市場規模は急速に拡大してきており,その形態も年々多様化が進んでいる.今後も市場規模は拡大の一途をたどると予測されており,デバイスのウェアラブル化へのニーズに応えうる技術の進歩が求められている. 我々はナノシートのこれらの長所に着目し,ナノシートを電子デバイス化することによって,“ウェアラブル”のさらに一歩先である“皮膚一体型”のデバイスが実現可能であると考え,ウェアラブルデバイスの次世代のデバイスの開発を目的として,ナノシート上に電子回路機能を実装する取組みを行っている.



<研究内容>

ナノシート上に電子回路を実装するために,主に配線実装技術・電子素子実装技術の2つの技術を構築した.配線実装に関しては,ナノシート上にカチオン性アクリル共重合体の層をコーティングすることで,インクジェットプリンタで導電性インクをプリントすることで実装可能となった.これにより,ナノシート上に自在に配線パターンを非常に廉価な手法で実装可能となった.また,電子素子実装に関しては,ナノシート同士で電子素子をラミネートするという手法を構築した.この手法では,ナノシート同士の密着力により電子素子がナノシート上に強力に固定されるため,接着剤や熱処理を加える必要がなく,接触抵抗も非常に小さいことが確認された.

さらにこの基盤技術を用いて,無線通信機能であるRFIDの実装に成功した.しかし,プリント配線の抵抗値がバルク配線に比べて大きいため共振周波数およびQ値の調節が難しいという課題があった.そのため,アンテナコイルの配線幅や配線間隔,半径,巻き数を調整し,最も動作性が高くなるようなアンテナコイルの設計手法を構築し,構築した手法に基づいた設計を行うことで,ナノシート上のプリント配線でも動作可能なアンテナコイルの実装を可能にした.

図2 ナノシートデバイス成膜手順と具体例(左:LEDの点灯 右:RFID)




<今後の展望>

ナノシートデバイスを実用的なフェーズに進めるためには,生体センシング機能あるいはアクティブな機能の実装が必要である.開発したRFIDと組み合わせることで,PCやスマートフォンとデータを無線通信して身体状態を観察・管理することが可能となる.ナノシートデバイスは装着感がないため,日常の健康管理への応用が期待されるほか,伸縮性の大きい箇所や曲率の大きい箇所への貼付も可能であるため,アスリートのトレーニング効率向上等への応用も期待される.現在は具体的なセンシング機能の検討と,実装へ向けた取り組みを行っている.

図3 皮膚一体型デバイスの応用