認知症患者の自己効力感創出のためのゲーム型RT


<研究目的>

2025年認知症高齢者の人数は700万人を超える推定であり,国家戦略案でも重点政策に位置づけられている.認知症では認知機能喪失の不安から自己効力感の低下を引き起こすことがある.また,自己効力感の低下から,自信,意欲が次第になくなり,自力で行動することが困難となる.これを防ぐために外部支援によって自信,意欲を高め自己効力感を高める介入的手法が求められている.本研究では,この介入手法の新たな手段として認知症患者自身でロボット操作を行わせるロボット・レースゲームを考案した.認知症患者自身が意のままにロボットを操作することで自己効力感が高められ,自己肯定意識を保つことができると仮説を立て,システム開発と認知症患者における有用性を検証する.


<研究内容>

システム構成

本装置は,小型移動ロボットと操作インタフェースで構成され,それを用いたゲームを考案している.


小型移動ロボット

図 1 小型移動ロボット

ロボットでは,動きの自由度が高い全方向移動台車を採用している.さらに,ロボットに親しみを与えるために,知名度の高いゆるキャラに扮したロボットでキャラロボットを製作した.大きさは高さ230㎜,直径200㎜の円形の小型ロボットである.

操作インタフェース

操作インタフェースは認知症患者にも容易に理解できるように工夫を施した.一般的に操作をする際,指などで細かに操作するコントローラーが用いられる.しかし,コントローラーはボタンが多く,構造が複雑なため認知症患者では理解が容易ではない.そこで,操作をより容易にするため,手を振る,手を挙げるなどの単純な動きで操作できるように配慮した.身体各所に適した動きを検知するためのモーションキャプチャーとして,手の動きはLeap Motion,身体の動きは磁気型モーションキャプチャーを採用した.

ゲームシステム

本システムでは,認知症患者の交流を促すために対戦型ロボット・レースゲームを考案している.ここでのルールは,スタートしてからポールを回り,折り返して元の位置に戻る単純な課題で効果検証を行っている.これまで認知症患者に対戦型レースゲームを行ったところロボットに高い関心を示しつつ,意欲的に操作を行う挙動が観察されている.具体的にはロボットの動きに対して,笑顔などのポジティブな情動変化を誘発し,自分で操作をしてゲームを行うことに満足している様子や伺われた.


図 2 本システム利用の様子


<期待される成果>

現在,臨床施設で認知症患者を対象として臨床試験を実施している.今後は認知症患者の自己効力感向上に対する検証のみならず片麻痺患者などへのリハビリテーション分野の応用も期待されている.