次世代がん治療を支援する穿刺RT


近年,自家の樹状細胞を利用したワクチンを直接腫瘍に穿刺,注入することで,自己免疫系を最大限利用して腫瘍を根絶する新たな癌治療法への期待が高まっている.この施術は,25G(直径0.53[mm]程度)の極細針を用いるため,非常に低侵襲であり,患者への負担が少ない.

図 1 穿刺対象となる腹部のCT画像

しかし針が極めて細いことから穿刺中に針がたわみやすいため,腫瘍への精確な穿刺は難度が高く,施術できる医師が限られている.また下腹部リンパ節など身体深部の穿刺治療においては,腸ガスの影響などを受けずに鮮明な画像を取得できるCTをガイドにして施術が行われるが,穿刺の難度が高い部位を対象とする場合,頻繁にCTを撮影し穿刺の状態を確認しなければならず,医師及び患者への放射線の被爆量の増加が懸念される.そこで,我々はCTガイド下において自動かつ高精度に穿刺を実現するロボットの開発をすすめており,この導入により,以上の問題の解決を目指している.

本研究において対象とする腫瘍の発生域は下腹部に点在する腹部大動脈周囲のリンパ節とする.下腹部は様々な組織で構成されており,実際の施術では体表から目的の腫瘍に穿刺するまでに針は複数の組織を通過しなければならない.しかしそれらの力学特性は組織ごとに異なるため,穿刺の際に生じる針のたわみ方などが組織ごとに異なり複雑になることが予想される.特に脂肪を含む皮膚層,腹直筋などの筋層,大腸や小腸などの消化管が下腹部穿刺において針が通過する組織であり,穿刺支援ロボットの実現のためにはこれらの力学特性の異なる複数の組織(複合組織)において針のたわみの抑制する手法の構築が重要となる.その手段として,針を回転させたり,振動させたりすることに着目し,これらを併用する手法を考案した.そして,下腹部に存在する主な組織(皮膚,筋肉,腸管)に対して穿刺する際に,針の振動・回転の付与によるたわみ量の違いを検証した.その結果,皮膚,筋肉を穿刺する際には振動・回転を併用し,腸管を穿刺する際には振動のみを付与する手法が有効であることを明らかにした.またその結果をもとに振動・回転を併用して下腹部を想定した複合組織への穿刺を行ったところ,たわみ量が有意に抑制されることが分かった.

図2 針を振動・回転させる穿刺手法の検証実験装置