重心バランス訓練のための知覚支援システム


脳卒中を発症すると後遺症として半身が麻痺してしまう片麻痺を患うことが多い.片麻痺になると意志的に筋肉を動かすことができない運動麻痺,接地感覚を正確に識別できない感覚障害を患い,片方の足が自在に操れなくなる.そのため,麻痺していない足に依存した状態で立位を行い,バランスを保つ能力が健常者と比較して低いことが知られている.そこで,片麻痺患者のバランス能力向上のためのトレーニング装置を開発することを研究目的とした.

骨盤帯への振動バイオフィードバックにより体幹の傾きを知覚させ,体の傾きを直すことによりバランス向上のための訓練をおこなうことができるバランストレーニングシステム(図1)を開発した.システムはWiiボードと振動呈示用ベルトとPCにより構成されている.Wiiボードは重心位置を取得するために用いており,図1の右上の黒い図の中の赤い点が取得した重心位置を表している.振動呈示用ベルトは体幹の傾きをバイオフィードバックするための装置であり,振動呈示箇所は図1の右下の図の数字が記された箇所である.片麻痺患者は体が麻痺しているので,骨盤帯の振動を感じやすい箇所(図1の左下の図の数字が記された箇所)に振動が与えられるように振動呈示箇所を設定した.トレーニングは患者の能力に応じて図1の右上の図に記されているような円(以下,目標円)を設定し,重心が目標円から逸脱すると,逸脱した方向に応じた振動呈示箇所が振動するので(例:重心が第1象限に逸脱すると①の振動箇所が振動),振動箇所と逆方向に体幹を動かし,体幹の傾きを直すことにより行う.以上の動作を繰り返すことによりトレーニングを行う.バランストレーニングシステムを片麻痺患者に適用した結果,トレーニング前後で重心の動揺が減り,バランス能力が向上した.今後は患者だけでなくアスリートなどに対して適用することが期待される.

図1 バランストレーニングシステム


現在,患者のリハビリテーションの手助けを行う理学療法士は不足している.理学療法士の不足のため,麻痺の度合が回復しやすい急性期に十分なリハビリテーションを受けることができず,麻痺を十分に回復させることができずに日常生活に支障をきたしている状態でリハビリを終える人が出てくると考えられる.そのため,患者のみで行うセルフリハが重要となる.セルフリハを行う際にPCは扱いにくいので,スマートフォンでも同様のトレーニング行えるようにソフトウェアの移植を行った

図 2 スマートフォン版ソフトウェア